マスクの効果について
新型コロナウィルス問題で、外出時のマスク着用はいまや必須になっていますね。
マスクの置き場所を玄関にして、外出の際に忘れずにマスクも着けるようにされている方も多いと思います。
2020年春の最初の緊急事態宣言時には
マスク不足が深刻化し、正直マスクの種類を選ぶ余地はありませんでしたね。
あれから一年近くが経過し、マスクも多様な種類のものから選べるようになりました。
では、マスク着用には実際どのくらい新型コロナウィルスの感染予防効果があるのでしょうか?
実は新型コロナウィルス問題以前、風邪やインフルエンザが一般的なマスクで予防できるといったはっきりした研究結果がありませんでした。
今回、コロナウィルスの問題以降で、マスクの効果の統計が取られ感染拡大に効果が大きいことが証明されました。
さまざまな感染抑制策の効果を分析した研究によると、顔の覆いだけで、感染者数を顕著に減少させることができ、イタリアでは 4 月 6 日~5 月 9 日に 78,000 以上、ニューヨークでは 4 月 17 日~5 月 9 日66,000 以上の感染を抑制した、ということです。
R. Zhang, et. al. Identifying airborne transmission as the dominant route for the spread of COVID-19. PRNS, 117, 26, 14857-14863, June 30, 2020.
WHOも2020年春頃にマスクには感染予防効果があるようで、着用を推奨するよう方針を転換しています。
欧米では文化的に、医療施設などを除いて公共の場でマスクを着用するのを嫌う文化があるようです。
私の知人でも欧米在住経験のある日本人は、日本の冬に感染予防のためにマスクをしている人がいることに抵抗感があるようでした。
いま日本では義務ではなく罰則もなくとも、公共の屋内では幼児を除いて皆マスクを着用しています。
欧米ではマスク着用の義務化や罰則を課す国や地域も、たるようです。
もともとの文化的な違いに日本や東アジアの感染対策のとりやすやを感じました。
ちなみに日本では花粉症が増加し、いまでは国民の半数近くになっています。このことが外出時のマスク着用に違和感のない文化につながっているのでは?という想像から調べてみたところ、欧米でも植物の種類は違っても花粉症の人はそれなりに多いようです。
マスクの種類はどのようなものが効果的なのでしょうか?
これは実社会での研究は難しいようで、実験室でのシミュレーション実験の結果からの推測になります。
理化学研究所の研究では、
不織布マスク、綿製手作りマスク、ポリエステル製手作りマスクという素材の異なる3種類のマスクについて、飛沫・エアロゾルの飛散の仕方をシミュレーションし、マスクによる飛散抑制効果を評価しています。
結果、素材の種類にかかわらず、マスクは7割以上の飛沫・エアロゾルの飛散を抑制しており、感染予防に非常に有効であることが確認されました。また、綿製のマスクは、他の2種類に比べてフィルター性能が若干落ちるものの、その分、呼吸がしやすいことから、夏場や運動中は綿製のマスクを着用するなど、時と場合に応じて使い分けるとよいそうです。
図1(pickup-2-1.jpg (1311×725) (riken.jp)クリック)
不織布マスク、綿製手作りマスク、ポリエステル製手作りマスクという素材の異なる3種類のマスクについて、飛沫・エアロゾルの飛散の仕方をシミュレーションし、マスクによる飛散抑制効果を評価。黄色の粒子はマスクの隙間から漏れ出た飛沫・エアロゾル、赤色の粒子はマスクや顔に付着した飛沫・エアロゾル、青色の粒子はマスクを透過した飛沫・エアロゾル。不織布マスクはフィルター性能が高い一方で、隙間から漏れる量が多いことがわかった。また、手作りマスクに関しては、綿製よりもポリエステル製の方がフィルター性能が高い一方で、綿製の方がマスクを透過する飛沫の量が多い分、隙間から漏れる量が少ないことがわかった。
出典:坪倉誠(理化学研究所 神戸大学/教授)「室内環境におけるウイルス飛沫感染の予測とその対策」(2020年8月24日記者勉強会資料)
ちなみにネック・ゲートルやバンダナなどのマスクの代 替物は非常に少ない保護にしかならないことが分かっています。
14 E. P. Fischer, et. al. Low-cost measurement of face mask efficiency for filtering expelled droplets during speech. Sci Adv 2020; 6: eqbd3083, September 2, 2020.
医療者は必要な診療の際には医療用マスク(N95)を装着する機会があります。強いバンドでマスクを顔に密着させるためかなり圧迫感があり、またマスクの透過性が低く息苦しい感じもあります。長時間装着するのはかなりのストレスになります。
この研究結果も装着時の感覚を裏打ちするように、隙間漏れが少なく透過性の低いものが効果的なことがわかりました。
以上より、まとめとしては
マスクの装着はコロナウィルス感染予防に有効でした。
マスクの種類では市販の不織布マスク、綿製手作りマスク、ポリエステル製手作りマスクも飛散抑止効果が認められました。
最も飛沫・エアロゾルの透過性が低いのは不織布マスクですが、透過性が低いマスクは隙間もれが多い。