血圧の正常値とは?診察室血圧と家庭血圧の違い

血圧とは、心臓が血液を押し出すときに血管にかかる圧力のことです。この血圧には「収縮期血圧(上の血圧)」と「拡張期血圧(下の血圧)」の2つがあります。収縮期血圧は心臓が収縮して血液を送り出すときの圧力で、最も高くなります。拡張期血圧は心臓が拡張して血液が心臓に戻るときの圧力で、最も低くなります。

血圧の測定は、計測する環境によって数値が異なるため、以下の3つの方法に分けられます。

1.診察室血圧(病院やクリニックで測定される血圧)

2.家庭血圧(自宅で自分自身が測定する血圧)

3.24時間血圧専用機器を装着し、15分〜1時間ごとに測定する方法

日本では、主に「診察室血圧」と「家庭血圧」の2つが基準として用いられています。一般的に、家庭血圧の方が診察室血圧より収縮期・拡張期ともに約5mmHg低くなる傾向があります。

血圧の分類と正常値の基準

血圧は、測定する場所や状況によって異なります。そのため、診察室血圧と家庭血圧のそれぞれにおいて、基準となる数値が定められています。以下の表は、日本高血圧学会のガイドラインに基づき、分類ごとに両方の基準を比較したものです。

血圧分類 診察室血圧(mmHg) 家庭血圧(mmHg)
至適血圧 収縮期120未満
拡張期80未満
収縮期115未満
拡張期75未満
正常血圧 収縮期130未満
拡張期85未満
収縮期125未満
拡張期80未満
正常高値血圧 収縮期130〜139
拡張期85〜89
収縮期125〜134
拡張期80〜84
Ⅰ度高血圧 収縮期140〜159
拡張期90〜99
収縮期135〜144
拡張期85〜89
Ⅱ度高血圧 収縮期160〜179
拡張期100〜109
収縮期145〜159
拡張期90〜99
Ⅲ度高血圧 収縮期180以上
拡張期110以上
収縮期160以上
拡張期100以上

※いずれか一方(収縮期または拡張期)の値が該当すれば、その分類に当てはまります。
※Ⅰ〜Ⅲ度高血圧に該当する場合は「高血圧」と診断されます。

診察室血圧は、白衣高血圧などの影響を受けてやや高くなりがちです。そのため、家庭血圧は診察室血圧よりも収縮期・拡張期ともにおおむね5mmHg低い値で評価されるのが一般的です。

また、診察室での測定値だけでなく、家庭での血圧も5~7日間程度の平均値をもとに診断を行います。高血圧の診断においては、家庭血圧の方が優先して用いられることも大きな特徴です。

家庭血圧の重要性と測定のコツ

血圧の評価においては、家庭血圧の値の方が優先されることが多いです。家庭での測定は、日々の生活の中での血圧をより正確に反映するため、次のような方法で行うと良いでしょう。

  • 測定は起床後1時間以内と夜寝る前の1日2回
  • 測定前にはトイレを済ませ、静かに5分ほど座ってから行う
  • 測定時間や方法を毎日同じように保つことが大切
  • 5~7日間連続で測定し、平均値を記録

このようなデータが、高血圧の診断や治療の効果判定に役立ちます。

高値血圧に注意!高血圧でなくても油断は禁物

高血圧とまではいかなくても、「高値血圧」と診断されることがあります。

高値血圧とは、

  • 診察室血圧130/80mmHg以上
  • 家庭血圧125/75mmHg以上

この状態の方は、将来的に高血圧になるリスクが高いとされています。

また、糖尿病や慢性腎臓病を持っていたり、喫煙習慣がある場合には、脳や心臓の血管病のリスクがさらに高まることが知られています。

したがって、高値血圧の方も生活習慣の見直しや血圧の定期的な測定が推奨されます。

血圧を左右する要因と生活習慣

血圧は以下のような要因によって変動します

  • 心臓が1回の拍動で送り出す血液の量
  • 血管の太さ
  • 血管の硬さ(柔軟性)

次のような生活習慣は、血圧の上昇につながりやすいため注意が必要です。

  • 塩分の摂り過ぎ
  • 運動不足
  • ストレス過多
  • 飲酒・喫煙習慣
  • 野菜や果物の不足
  • 脂っこい食べ物の摂取が多い

血圧は「目に見えない健康のサイン」です。普段から自分の血圧を意識し、生活の中で管理を続けることが健康維持に大きくつながります。

よくある質問(FAQ)

1.正常な血圧の値はいくつですか?

診察室血圧では120/80mmHg以下、家庭血圧では115/75mmHg以下が正常とされています。

2.家庭血圧の方が診察室血圧より低くなるのはなぜですか?

診察時の緊張(白衣高血圧)などの影響により、家庭で測る方がリラックスした状態で測定できるためです。

3.血圧を測るのに最適なタイミングは?

起床後1時間以内と夜寝る前の2回が推奨されます。

4.高値血圧とは何ですか?

高血圧ではないが正常よりやや高い状態。将来的に高血圧になるリスクがあります。

5.1回だけ血圧が高かった場合は高血圧ですか?

高血圧の診断には複数回の測定結果が必要です。1回だけでは診断されません。

6.高血圧になる原因は?

遺伝、塩分過多、運動不足、肥満、ストレスなどが挙げられます。

7.高血圧を放っておくとどうなりますか?

動脈硬化が進み、脳卒中や心筋梗塞など重大な病気のリスクが高まります。

8.家庭血圧はどうして重要なのですか?

日常生活での実際の血圧状態を反映するため、診断や治療の判断材料として重視されます。

9.血圧が正常でも安心してよいのですか?

定期的な測定と生活習慣の見直しが大切です。正常でもリスク因子がある場合は注意が必要です。

まとめ

血圧は毎日の健康を映す「見えない指標」です。正常値だからと安心せず、日々の生活習慣に注意し、家庭での血圧測定を習慣づけましょう。早期に変化に気づくことが、病気の予防につながります。

健康は毎日の積み重ねから。ぜひこの機会に、ご自身の血圧と向き合ってみてください。

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大川医院院長 大川 修(おおかわ おさむ)

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