高血圧
高血圧症とは

血液が動脈内を流れる時に血管壁の内側を押す圧力のことを血圧といいます。
心臓は収縮と拡張を交互に行って全身の様々な器官に血液を送るポンプのような役目のある臓器で、心臓が収縮(大きく縮む)して動脈内へ血液が送り出される時に圧力が最も高くなるので、最高血圧(収縮期血圧)と呼ばれています。また、心臓が拡張(大きく広がる)した時の血管壁を押す圧力は最低血圧(拡張期血圧)と呼ばれています。
さらに、血圧は心臓から送り出される血液量や動脈の太さ・弾力性などによっても大きく影響されます。動脈硬化により心臓が血液を送り出す力(収縮期血圧)が高くなれば動脈内の血液量が増加しますし、末梢の動脈血管などが動脈硬化の影響で細くなり弾力性が損なわれても血圧(拡張期血圧)が高くなります。
このように、最高血圧(収縮期血圧)や最低血圧(拡張期血圧)の両方もしくは片方どちらか一方でも、正常値よりも高い状態が続いている場合に高血圧症と診断されます。
ただし、血圧は様々な生理的要因でも簡単に変動します。運動や食事、入浴などの基本的な生活習慣でも血圧は高くなり、緊張やストレス、不快感などの精神的要因でも高くなります。医療機関での血圧測定が、白衣や病院の雰囲気などの影響で普段よりも高い測定値がでることが多いのも精神的要因によるものといわれています。したがって、一度だけの血圧測定で判定するのではなく、同じ条件の下で何度か血圧を測定したうえで高血圧症の確定診断をします。
高血圧症の判定基準
- ①診察室血圧の場合
- 最高血圧(収縮期血圧)は140mmHg以上または最低血圧(拡張期血圧)は90mmHg以上
- ②家庭血圧の場合
- 最高血圧(収縮期血圧)は135mmHg以上または最低血圧(拡張期血圧)は85mmHg以上
また、高血圧症の中でも悪性高血圧(高血圧緊急症)と呼ばれる危険な高血圧症があります。
悪性高血圧(高血圧緊急症)とは、最高血圧(収縮期血圧)が急激に180mmHg以上になることで、心臓や大動脈、脳、腎臓などに重篤な障害が起こり得る病態を引き起こすので、早期発見のためにも日頃から定期的に自宅で血圧を測定することが重要です。
高血圧症の症状
高血圧症による症状は、血圧が相当高くならない限り自覚症状は現れないことが多いです。
症状を自覚した時には既に生命に関わる重篤な合併症を発症していることもあります。
初期症状としては、主に以下の症状があります。
- 拍動性の頭痛や頭重感、肩こり
- めまい,吐き気
- 動悸や胸痛
- 網膜出血による視力低下 など
高血圧症が常態化して放置すると、血管損傷による動脈硬化が進行していきます。
- 脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)
- 狭心症や心筋梗塞、心不全などの心疾患
- 大動脈瘤や大動脈解離
- 腎不全や腎硬化症といった腎臓病 など
以上のような生命に関わる重篤な合併症を発症する可能性も高くなります。
高血圧症の原因と種類
高血圧症の主な原因は生活習慣などの環境的要因と遺伝的要因です。生活習慣では、塩分の過剰摂取や運動不足による肥満が高血圧症を引き起こします。加齢によっても血圧は上昇しますので65歳以上では約7割の方が高血圧症になるといわれています。
高血圧症は発症原因によって大きく2種類に分類されます。
①本態性高血圧症
日本人の全高血圧症患者の約9割を占めるもので、基礎疾患をもたない原因不明の高血圧症といわれています。現在では、長期間におよぶ不摂生な生活習慣(肥満、過食、塩分の過剰摂取、慢性的な運動不足、喫煙や多量の飲酒、ストレスや睡眠不足など)や遺伝的要因が関係しているのではないかと考えられています。
②二次性高血圧症
日本人の全高血圧症患者の約1割を占めるもので、そのうち若年者の高血圧症では約半数が二次性高血圧症ともいわれています。
二次性高血圧症の原因は明らかなことが多く、様々な治療で血圧の正常化が期待できるといわれています。原因としては、他の病気(甲状腺疾患、腎臓や副腎疾患、大動脈弁狭窄症、睡眠時無呼吸症候群など)による影響や、ステロイドなどの薬剤を長期投与することによる副作用など、様々な要因によって発症する高血圧症です。
治療
高血圧症治療の基本は、『まずは食事と運動』がよく知られています
治療内容としての重要なポイントは、血圧のコントロールを目的とすることです。
食事療法
食事に含まれる塩分量が血圧と大きく関わるので、塩分の量や栄養のバランスなどを調整します。
(注意するポイント)

- ①一日の塩分摂取量を6g未満にする
- ②ラーメンやうどんなどの麵類の汁は残す
- ③漬物や塩辛などの塩分の強い食事を減らす
- ④減塩表示のある調味料などを効果的に使用する
- ⑤魚や野菜を多く摂取してバランスの良い食事を心がける
- ⑥アルコール類の摂取を控える(節酒)
- ⑦喫煙に関しての指導(節煙や禁煙)
運動療法
運動には血行を改善する効果と体重を減らす効果があり、結果として血圧を下げることにつながります。また、運動でストレスを発散することで、動脈硬化を予防できるともいわれているので効果的かと思われます。大切なのは、無理せずに継続することです。
(注意するポイント)

- ①ウォーキングや散歩など身近な運動から始める
- ②無理せず体調や天気の良い時だけでも運動する
- ③自身の体力に合わせた運動を継続する
目安:一日30分以上の運動
薬物療法
食事や運動などの生活習慣の見直しをしても、血圧が改善しない場合は飲み薬による治療を行います。高血圧症の薬には様々な種類があるので、ご自身の体調にそれぞれ合わせた飲み薬を処方します。
高血圧症の検査
高血圧症の検査は高血圧症の診断、同時に起こる他の生活習慣病の評価、高血圧症による合併症に評価のために用いられます。高血圧症では以下のような検査が行われます。
- 尿検査・血液検査
尿検査・血液検査は、高血圧のほかに脂質異常症や糖尿病などを合併していないか、また腎臓機能の異常、ホルモン異常など高血圧を引き起こす病気が隠れていないかを調べるために行います。 - 胸部X線検査
胸部X線検査はX線を使って胸の中の状態を調べる検査です。
突然の血圧上昇の原因となる危険な病気として心不全や大動脈開始があり、胸 部X線検査を行って、心臓や大動脈の形を調べることで見つけられることがあります。 - 頸動脈超音波検査
首の左右の動脈(頸動脈)を観察することで、血管内の内中膜複合体(IMC)の肥厚具合やプラーク(コレステロールの塊)の付着による狭窄度、血流速度の評価など、動脈硬化の進行度が判断されます。脳卒中や脳梗塞の原因となる動脈硬化を判断するためによく選択される検査です。さらに頸動脈を観察することで全身の血管状態も推定・把握するのに役立つともいわれています。 - ABI検査(足関節上腕血圧比)
上腕と足関節の血圧を測定して、動脈硬化の進行度や血管年齢を調べます。
様々な高血圧合併症のリスク判定にも役立つ検査です。 - 心電図検査および心臓超音波検査
高血圧症による動脈硬化の影響で、心臓にも動脈硬化や心臓肥大が進行することがあります。さらに、狭心症や心筋梗塞など生命の危険性がある重篤な心臓疾患を引き起こす可能性もあります。
心電図や心臓超音波の検査では、心臓内部の情報を画像で詳細に可視化できるので、狭心症や心筋梗塞をはじめ、動脈硬化による心臓肥大や弁膜症の進行度などを判断するのにも役立ちます。

