健康診断の結果を正しく理解しましょう

健康診断

健康診断や人間ドックの受診は、無症状の隠れた病気の早期発見に限らず、将来発症する可能性のある病気を未然に予防する大きな役目があります。
定期的に受診して検査結果を正しく理解することで、今後の生活習慣や健康維持の目標設定に大きく役立ちます。
特に、高血圧・糖尿病・高脂血症などの生活習慣病を放っておくと、同世代の方々と比べて動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞、脳出血など重篤な病気を引き起こす危険性もあります。
健康診断や人間ドックの結果で『異常』と指摘されましたら、当院までお気軽にご相談ください。

健康診断の『結果』についての解説

健康診断の『結果』には様々な判定結果があり、各々の結果に応じて対応が異なります。各々の判定結果がどのような意味を表しているのかを理解して、今後の生活習慣や健康維持に役立てていくことが重要です。

判定結果の区分

『異常なし』

受診した健康診断の項目には、特に異常はありませんでした。

『要経過観察・要再検査』

緊急性はありませんが、健康診断の項目に何らかの異常が認められ経過観察の必要性があります。生活習慣などの見直しにより健康維持に努める必要性があります。

『要精密検査』

健康診断の項目に何らかの異常が認められ、精密検査を受診しないと病気の特定が困難な状態です。早めに精密検査の受診が必要となります。

『要治療』

治療の緊急性が高い状態で、速やかに専門の医療機関への受診が必要となります。

以上の項目で、『要精密検査』・『要治療』の判定を受けた場合は、専門の医療機関を受診しましょう。

健康診断の『検査項目』についての解説

健康診断では、今現在の健康状態を調べるために様々な項目を検査します。
以下に、主要な検査項目の内訳を解説します。

メタボリックシンドローム

生活習慣病などにより内臓脂肪が溜まっている状態で、腹囲が男性で85cm、女性で90cm以上の方が該当します。動脈硬化が進行しやすい状態なので、高脂血症・糖尿病・高血圧症などいくつかの病気を発症していることが多く、脳出血・脳梗塞・心筋梗塞などの危険性が高くなります。メタボリックシンドロームと診断されたら、生活習慣の改善とともに、治療の必要な病気が隠れていないか判断が必要なため、医療機関を受診を検討して下さい。

血圧

血圧が高い状態が継続していると、血管には大きな負担がかかり続けており、動脈硬化を起こしやすくなります。それに伴い、脳出血・脳梗塞・心筋梗塞などの危険性が高くなります。また、血圧は緊張などの様々な外的要因でも容易に上昇してしまうので、もし家に血圧計をお持ちで安静時に測れる方は、何回か測定して結果を記録し、通院時にお持ち頂ければ高血圧の診断に有用です。

コレステロール値

LDLコレステロール(悪玉コレステロール)や中性脂肪の数値が高い状態が続くと、動脈硬化が進行する危険性が高くなります。逆に、HDLコレステロール(善玉コレステロール)は動脈硬化を抑える働きがあります。脂質異常症とは、LDLコレステロールや中性脂肪が高い状態とHDLコレステロールが不足している状態を含めた総称となります。LDLコレステロール・中性脂肪・HDLコレステロールの各々の数値に限らず、数値のバランスが重要であり、バランスが崩れていくと脳出血・脳梗塞・心筋梗塞などの危険性が高くなります。コレステロール値の異常を指摘された場合は、生活習慣の改善とともに、治療が必要かどうか医療機関を受診してください。

血糖値・HbA1c

糖尿病や糖尿病予備軍があるのかを血液で調べる検査です。血糖値は食事の影響を受けやすいため、過去1~2ヶ月間の血糖値の平均が反映されるHbA1cの数値で判定されることが多いです。血糖値やHbA1cが高いと血管への負担によって動脈硬化が進行しやすくなり、脳出血・脳梗塞・心筋梗塞などの危険性が高くなります。また、糖尿病は合併症が多く、失明や足趾の壊死などの症状が出る可能性があるので、高血糖を指摘された場合は、生活習慣の改善とともに、治療が必要かどうか医療機関を受診してください。

尿酸値

主に痛風の判定指標になります。尿酸値が高いと腎臓や血管に大きな負担がかかるので、尿酸値を適正にコントロールする必要性があります。プリン体を多く含む食品(ビールなどのアルコール類全般・肉や魚介類など)の摂取をなるべく減らして、適度な水分補給と運動、摂取カロリーを抑えることなどが痛風の発症予防につながります。

尿検査

尿中の成分(タンパク質や糖など)、血尿の有無などを調べる検査です。尿検査の結果で、腎炎・ネフローゼ症候群、糖尿病などの内科系の病気、腎がん・膀胱がん・尿路結石などの泌尿器系の病気の可能性を判定しています。尿検査で異常を指摘された場合は、精密検査(血液検査、尿検査、超音波検査・CTなどの画像検査)で病気の有無を調べる必要があります。

肝機能

肝臓の細胞に多く由来している酵素のASTやALT値、ALP値、γ-GTP値などの数値を調べることで、肝機能障害があるのかを判定する検査です。肝機能障害があるかどうか分かりますが、何が要因となっているかは把握できません。主な要因として、内服薬やウイルス感染、肥満、お酒などがあります。肝機能数値の異常を指摘された場合は、原因・治療の必要性を判断するためにも精密検査(血液検査、超音波検査・CTなどの画像検査)を検討する必要があります。

腎機能

腎臓の機能が正常に働いているかを評価するには、尿素窒素やクレアチニンなどの数値を調べて判定します。尿素窒素やクレアチニンは体内の老廃物なので、本来であれば尿として体外に排出されます。尿を生成する腎臓の働きが悪くなると老廃物が排出されにくくなり、血液中に溜まりやすくなります。腎機能障害があるかどうか分かりますが、何が要因となっているかは把握できません。腎機能数値の異常を指摘された場合は、原因・治療の必要性を判断するためにも精密検査(血液検査、尿検査、超音波検査・CTなどの画像検査)を検討する必要があります。

貧血

貧血の有無は、血液中の赤血球量・血色素濃度(ヘモグロビン濃度)・ヘマトクリット値を調べることで判定されます。貧血があるかどうか分かりますが、何が要因となっているかは把握できません。貧血の原因は、胃や大腸からの消化管出血・血液の病気・婦人科の病気などがあります。健康診断で貧血を指摘された場合は、内科・婦人科にて原因・治療の必要性を判断するために、精密検査(血液検査、胃カメラなどの内視鏡検査など)を検討する必要があります。

心電図

心臓の拍動で生じる微弱な電気信号を増幅して記録する検査で、心臓が正常に働いているのかを調べる検査です。狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患、不整脈、心肥大、心筋症などの心疾患を早期に発見・治療するために必要な検査です。心電図異常を指摘された場合は、ホルター心電図検査(24時間以上装着する心電図)、心臓超音波検査などで病気の有無を調べる必要があります。

レントゲン

X線を照射して、胸部など体内の状態を画像で可視化する検査です。健康診断で行われる胸部レントゲン検査では、心臓や肺の状態、胸部中枢にある縦隔の状態、側彎症や胸水の有無などが判定されます。レントゲン検査で異常と指摘されても特に問題ない場合もありますので、確定診断のためにも早めに医療機関を受診してください。確定診断のためには、CT検査などを行っていきます。