胸部レントゲン検査

健康診断や肺がん健診などでも頻繫に行われている胸部レントゲン検査とは、X線を背中側から照射して胸部全体を撮影することで、肺や胸郭などの胸部に腫瘤(腫瘍等)や異常陰影がないのか、心拡大や胸水などの異常所見がないのかを、画像で判断する検査です。
周知の通り、人間の体内は骨や筋肉をはじめ、脂肪、空気、水分など様々な組織で構成されています。
様々な組織にはX線の透過性に違いがあり、その特徴を利用して各組織を通過したX線量の違いを可視化するために白黒の画像として撮影します。空気などのX線が透過しやすい箇所は黒色で表現して、骨などのX線が透過しにくい箇所は白色で表現して撮影します。
つまり、様々な組織の影を重ねて「影絵」のような白黒の画像が作成することで、病気の疑いがある箇所を特定することが可能となり、多少なりとも異常が疑われた場合には「要精密検査」と判断されます。
胸部レントゲン検査で撮影される影については、以下のような検査の結果が記載されます。ただし、その検査結果が必ずしも病気の有無や診断と直接的には結び付くものではありません。
- 胸膜肥厚、胸膜癒着‥‥多くは過去に肺炎などによる炎症によって生じたもので、肺を包んでいる胸膜の肥厚や、胸膜と胸腔を囲んだ胸壁が癒着したことで生じます。胸膜炎や肺感染症などを過去に患ったことが原因となることがあります。
- 粒状影、結節影、腫瘤影‥‥いずれも円形〜楕円形の形状をした影を指していて、大きさの違いによって、それぞれの呼名が異なります。(粒状影5mm以下、結節影5mm~3cm、腫瘤影:3cm以上)
- 浸潤影‥‥肺の肺胞という部分に細胞成分や液体成分が貯まることによって生じます。肺炎、肺感染症などが原因となることがあります。
胸部レントゲン検査から疑われる病気
胸部レントゲン検査で分かる病気や異常として、以下のようなものがあげられます。
- 肺炎……肺に炎症が起こる病気
- 肺結核……結核菌の感染によって肺に炎症が起こる病気
- 肺気腫……喫煙習慣により発症し、肺の組織が壊れ、肺の空気の流れが悪くなる病気
- 気胸……肺から空気が漏れて肺がへこみ、胸痛や呼吸困難などの症状を引き起こす病気
- 胸水……通常では存在しない水が胸部にたまっている状態です。
- 心臓の拡大……何らかの原因で心臓が大きくなること
- 肺がん……気管支や肺胞の細胞が何らかの原因でがん化したものです。
胸部レントゲン検査で「要精査」となった場合
胸部レントゲン検査は病気の疑いを見つけるのに役立つ検査です。
健康診断や肺がん健診などで胸部レントゲン検査の結果が「要精密検査」と指摘された場合は、はっきりとした診断を行うために、胸部CT検査などのより精度の高い画像検査を行っていきます。
CT検査は胸部レントゲン検査と同様に、X線を利用して画像の診断をする検査ですが、胸部レントゲン検査ではX線照射は1方向のみなので各臓器が重なり合うことで死角が発生してしまう欠点があります。しかし、CT検査では体の周囲全体から立体的にX線を照射するので、より精密で鮮明な輪切りの断面画像として撮影が可能です。
胸部レントゲン検査では、肋骨や血管、気管など様々な組織が重なり合うことで影がより濃く撮影されることがあり、異常と判断される事があります。そのため、胸部レントゲン検査で異常を指摘されても、肺がんなどの重篤な病気が発見される頻度は多くはありませんが、検査で異常が認められたら精密検査を受けましょう。
胸部CT検査でわかること
胸部CT検査は、数mm程度に細かく輪切りされた肺などの断面画像を観察して、初期の肺がん、気胸、肺気腫、肺炎、肺結核などの病変を見つけることができます。
胸部CT検査後について
CT検査で異常がなかった場合
胸部レントゲンでは正常な骨や血管などの影が重なり合って、一見異常な陰影として判断されていた可能性があります。年に1回程度の定期的な健診を継続していきます。
CT検査にて異常があった場合
肺炎・非定型抗酸菌症・結核などの感染症や間質性肺炎、COPD、肺がんなどの様々な病気が疑われる場合には、確定診断のために必要な検査(血液検査、喀痰検査、呼吸機能検査など)や、各病気に対する治療が必要となります。さらに検査結果や病気の診断・治療に応じて高次医療機関に紹介させていただくこともあります。
CT検査にて異常所見が認められたが、良性なのか悪性なのか判断が難しい場合
数㎜程度のごく小さめの影などの場合は、悪性腫瘍のような治療を必要とする所見であるのか、良性腫瘍のような特別治療の必要がない所見であるのかを判断するのが難しいことがあります。このような場合は、再度1〜3ヶ月後あたりにCT検査をして判断をします。異常な影が次第に大きくなっている場合は肺がんなどの悪性腫瘍が疑われるので、確定診断のために精密検査を追加で提案させていただくことがあります。逆に、異常な影が消えた場合は腫瘍の可能性は低く、一時的に肺の炎症が生じていたと考えられ経過観察は終了となります。異常な影に変化が見られない場合は、徐々に経過観察の間隔をのばしてCT検査を繰り返します。CT検査を繰り返しても、影の変化が認められない場合は悪性腫瘍の可能性が低く、年に一度程度の定期健診で経過観察となります。
当院でCT検査が受けられます
当院ではCT検査機器を導入しており、検査に対応しています。医師の診察の後に即日CT検査が可能です。ネット予約、もしくはお電話にてご予約をお願い致します。
結果は、総合内科専門医である院長と遠隔読影システムにより放射線画像診断専門医によるCT画像のダブルチェックを行っております。そのため、患者様には撮影の1週間後に再度御来院をいただき結果説明させて頂いております。